左手

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2020年 19cmx27cm 紙、鉛筆

 中学1年の生徒達と、靴や手の鉛筆デッサンをやりました。物の形や色(明度)の全体を見て、決められた大きさの紙に描くことは、脳の色々な部分の働きを必要とします。対象と自身の作品を客観的、相対的に見る力、バランス感覚、指先まで制御して道具(鉛筆)の特徴を活かす力、イメージ通りの画面を実現するための集中力と自信。一般的には13〜14歳になると、こういう能力がほぼ準備され、何枚か試す内に、まるで開花する様に素晴らしくリアルなデッサンを仕上げられるようになります。もちろん写実が全てと言うつもりはありませんが、美術をやるため、いや、人として生きる為に必要なスキルだと私は思うのです。未熟児で内向的だった少年ピカソが、僅か7〜8歳でこの能力を身につけたのは、実際かなり恐るべきことで、それが学校で劣等生だったピカソの知能と人間性を人並以上に押し上げたことは疑い無さそうです。

 さて、自分の左手ですが、順調に歳を食ってきました。だんだん皺や血管が目立ってきて、久しぶりにまじまじ見ると変な感じです。人差し指の付け根の山が不恰好に膨らんでいるのは、10年ほど前に木工作業で鑿(ノミ)を打ち込んだ跡です。直ぐ押さえて血を止めたのですが、例によって医者には行かなかったので、その後パンパンに腫れ上がり、治るのに随分時間がかかりました。腱が一本切れたかズレたかして、今でも動きが少しギクシャクしていますが、大して不自由はありません。困ることと言えば、デッサンがちょっと歪んで見えるくらいでしょうか。