記念艦三笠


2016年 22cmx27cm 紙、鉛筆、水彩
 若い頃、猿島へ遊びに行くためちょくちょく渡し舟を使ったので、ここに灰色の船があることには気づいていました。ただ、「坂の上の雲」を読むまでは、それが日露戦争東郷平八郎秋山真之を乗せた有名な戦艦「三笠」だということを知らず、いつも素通りしていました。せいぜい船尾をちらっと眺めるくらいだったので、艦の大きさも分からず、ましてや観覧券を買って中に入ることなど思いもよりませんでした。今回、改めて絵を描くために乗船し、また周囲を廻ってみて、あまりの巨大さに全体を一枚の絵に入れることは諦めました。前斜めから描こうとすると、背景に余計なマンションが入ってしまうという理由もありました。仕方なく、陽射しを避けて木陰の石に座り、真横から主砲、艦橋の辺りに絞って描き始めました。
 真夏の公園、三笠の手前の焼きつくような地面には、バネ仕掛けの子供の遊具が二つ並んでいました。普通に考えれば雑音として無視してもよかったのですが、軍艦と遊具という取り合わせがちょっと面白かったので、画面に入れてみました。