室生寺十一面観音像


2016年 36cmx26cm 一版多色刷木版画
 中学1年生最初の課題は一版多色刷木版画です。版画制作で躓きがちな彫る作業が少なく、その割に凝った画面が作れるので、小学校でもよく使われる教材です。今回は彫りや配色、重色の参考作品として、この十一面観音像を刷ってみました。
 室生寺は奈良の中心部から離れているので、観光客が溢れるというほどではなく、いまだに土門拳が撮影した時代の雰囲気を残しています。20年位前、台風による倒木で五重塔の屋根が縦に引き裂かれたことがありましたが、それも元通りきれいに修理されました。小ぶりで上品な塔と金堂にあるこの観音像はとても魅惑的で、「女人高野」と呼ばれる室生寺を代表する造形だと思います。写真集を見ながら作業をしていると、初めて鎧坂や堂塔を訪れた午後の静かな感動がじわっと甦ってきます。