織部扇面向付


2014年 各径19cmx18cm、高5cm
 桃山時代の本歌をほぼそのまま、但しサイズだけは現代の食卓に合わせて一回り大きく、写してみました。新しい型を使っての試作品なので、あまり完成度にはこだわらず気楽に作りました。ただ、実際にやってみるまでわからなかったこともいくつかありました。例えば、緑釉が流れやすいことは知っていましたが、まあ大丈夫だろうと釉桶にざぶんと浸けて焼いてみたら、見事に下の薬は剥がれ落ち、窯の底板が痛々しい姿になってしまいました。土の量も少しずつ変えて作ってみましたが、こういう器にはどれぐらいの厚みが最適なのか、まだ決めきれずにいます。

 それにしても、この向付は桃山のベストデザインのひとつかもしれません。扇の骨部分を透かし彫りで表すことで、夏の器として、より涼しさを演出しています。機能的にも考えられていて、お造りを盛る白地の文様部分の隣には、一段高い堤で囲まれた醤油受けが付いています。器形が独特なので、鉄絵の方は敢えてさらっと描き流しているのもニクいところです。私も本歌ぐらいシャープな線で描きたかったのですが、その辺にあった筆で適当に真似たので、何だかちょっと野暮ったい葦(あし)になってしまいました。