イケコロシについて

 川喜田半泥子は作陶についていろいろ面白いことを語っています。「イケコロシ」というのもそのひとつです。轆轤で茶碗を引くときに、最初から最後まで力を入れ続けるのではなく、器の腰を決めるときと、縁を仕上げるときにだけ神経を集中して、他は力を抜いておけ、というぐらいの意味です。つまり、生かし(抜き)殺し(締め)です。作品が平板で抑揚のない、工業製品みたいになってしまうことを半泥子は嫌いました。

 何事もメリハリは大切です。学校で、ずっと厳しく注意し続ける先生は自分の仕事を果たしているつもりでも、他の優しい先生にしわ寄せが出てしまっているかも知れません。息を抜く場面があればまだいいですが、四六時中ガミガミやられたら、生徒はいじけてしまいます。
 人やものに言うことを聞かせたかったら、相手に身を寄せて、同じ方向を見ながら一押しすれば足ります。力ずくで責め立てるばかりじゃ、誰も最後までは従いません。
 さて、左手の指3本で、ゆったりした茶碗を引き上げられるようになれば、殆ど世の中の大事な間合いを掴んだも同然です。私は・・・達人の域にはもう少しです。