称名寺

2022年 16cm×22.5cm 紙、鉛筆、水彩

 日曜日の朝一で金沢文庫に「運慶展」を観に行きました。道路は空いていて、せっかく早く着いたのに、車を停めた駐車場から金沢文庫までの道を間違った様で、山越えのハイキングコースに迷い込んでしまいました。方向感覚を無くしたまま、2〜30分かかって何とか建物の裏側に出られたので事なきを得ましたが、着く前にかなり汗をかきました。

 今回 私の目当ては、運慶が夢想によって彫り上げたという舞楽面でした。北条政子が実朝の追善供養のために瀬戸神社に寄進した二面で、そのうちの抜頭(ばとう)面の裏には、朱漆の銘文が残っています。ほとんど公開されることがないものなので(或いは以前の運慶展にも出品されていたのを見落としたかもしれませんけど)、是非実物を目に焼き付けておきたいと思いました。2、3年前、瀬戸神社に問い合わせたら「常時公開はしていません」と言われて気持ちを募らせていた面に、今回やっと文字通り対面することができました。実際、目の当たりにすると、正面から撮った写真では想像もつかなかった程、立体的で驚きました。もう一つの陵王(りょうおう)面も素晴らしく、これは朝から山を越えて観に来た甲斐がありました。

 非常に満足して金沢文庫を出ると、隣の称名寺の浄土式庭園にやって来ました。何年か前にやはり金沢文庫で重源上人坐像を観た後、初めてこの庭園に足を踏み入れた時はちょっとビックリしました。短い隧道を抜けると、その先には全くの別世界が広がっていたのです。子供の頃に読んだ「ライオンと魔女」の異界に続く箪笥に入り込んだ様な、とでも言えば良いでしょうか。とにかく一度行ってみることをお勧めします。その際は、まず金沢文庫に寄ってから、正面玄関前のトンネルを潜ってみてください。駐車場がないので、私の様に変なコインパーキングに停めて、山越えのハイキングをしたくなければ、電車を利用した方が良いかもしれません。