東京都心と台風の空

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2019年 27cmx33cm 紙、鉛筆、水彩

 台風10号が西日本に上陸した日、龍の鱗の様に広がって動いて行く雲を見ていて、どこかでスケッチしようと思いました。雨に当たらずに都会と空を一望できる場所として頭に浮かんだのは、新宿高島屋の屋上でした。ちょうど小籠包も食べたい気分だったので、整理券を取っておいて、席に案内されるまでの待ち時間で描くことにしました。

 最近、絵を描いていて、自分の興味が、モチーフや風景の形を正確に記録することよりも、場の空気感や、その瞬間だけの光の臨場感を捉える方に向いているのを感じます。加藤周一は、日本社会・文化の基本的特徴として、①競争的な集団主義、②文化の此岸性(現世主義)、③現在主義、④極端な形式主義と主観主義をあげています。①はともかく、②③④は、確かに今の私の姿勢にそのまま当てはまる気がします。私にとっては、季語を入れて俳句を詠む様に、今ここにいる自分の視点でしか描けない絵にすることが大切であって、それ以外のことには関心が持てません。ですから、こうして詞書(説明文)でもつけておかないと、独りよがりでぶっきら棒な絵に見えてしまうかもしれません。