丹三郎

2023年 16cm×22.5cm 紙、鉛筆、水彩

 ずっとタイミングが合わず、振られ続けた蕎麦屋にしばらくぶりで入ることができました。早く着いて開店を待つ間、立派な長屋門の下で強い陽射しを避けながら、母屋を描きました。独特の柔らかい輪郭に縁取られた田舎家が、奥多摩の木立の中に品良く収まっていました。今回は日除けに使った長屋門も、過去に、やはり店の順番待ち中、スケッチしたことがあります。後で確かめてみると、門の茅葺き屋根はこの母屋とそっくり同じ形でした。

 「丹三郎」というのはここの地名になっています。恐らく豪農で庄屋でもあったこの家の屋号がそのまま土地の名前にもなったということなのでしょう。香り良く透明感のあるせいろと美味い蕎麦がきをいただき、私が店を出る時には、もう駐車場に入り切れない車が道路まではみ出していました。