野川公園の大榎

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2019年 27cmx33cm 紙、鉛筆、水彩

 以前にも描いたことがある、野川公園北園の大樹です。私が知る限り、こんなに見事な榎は他にありません。桜がちらほら咲き始めましたが、この木の葉はまだこれからです。でも前回載せた大國魂神社の欅とは逆に、枝ばかりでも大榎は生命力に満ちています。

 この絵には2時間近くかけたのですが、巨木の枝振りは複雑で、とても描ききれませんでした。満足できる仕上がりの為には、少なくともあと1時間必要だったかもしれません。次の予定があったので、ここで端折ってしまいましたが、後で眺めてみたら、まあそれなりの絵にはなっていたので、安心しました。土台、絵で現実を100%写し取るなんて、不可能な話で、無理にでもこうして時間で切り上げた方が良いのかもしれません。往々にして、思い通りに仕上げたものより、投げ出す様に終えた作品の方がマシだったりもします。

 スケッチの最中、通りかかった大学生風の男女グループが「これって、あの外国の木だよね。」と話しているのが聞こえましたが、違います。「この木なんの木」はモンキーポッド(レインツリー)という、全然 別の木です。榎はずっと昔から日本にありました。

 さて、しかし、じっくり観れば観る程、この木は巨大な脳の血管の様です。大地の滋養で丸々と膨らんだ、孤高の脳髄は、せわしなく地上を這い回る人の生活を尻目に、空や風景を枝々に抱きつつ、今日も武蔵野の原に立ち続けています。