前川國男邸


2014年 25cmx34cm 紙、鉛筆、水彩
 地方に向かう高速道路がどれも渋滞だったので、今年の連休は東京から出られませんでした。大きな地震で朝早く起こされたこどもの日は、特に目的もなく、家族で小金井公園内の江戸東京たてもの園に行きました。娘が小さい頃、連れて行く場所に困ると、だいたい多摩動物園かここでした。安全で、本物に出会えて、何かしらイベントまで用意されているこれらの場所は、子供でなくとも、それなりに楽しめます。
 園内には多くの歴史的建造物が移築されていますが、中でも私のお気に入りはこの建物です。建築家前川國男が昭和17年に設計して建てた自邸です。ゆったりした吹き抜けのリビングを中心にして、必要なスペースを左右対称に配しています。20年前、仲間と上越で借りていた、通称「ちろりん村」はおそらくこの前川邸をモデルにした住宅だったのではないでしょうか。
 建物の正面のベンチに腰かけてスケッチしてみました。左側のモミジは、多分そういう品種なのでしょうが、まだ5月なのに紫蘇のように赤く染まっています。新緑との対比がちょっと不思議な景色でした。前川邸の前を、人々は皆、口を揃えたように「こんな家に住みたーい。」と言って通り過ぎて行きました。