駆け去りし者(A.セナ)

1996年(漆塗り直し2022年)高107cm×幅107cm×奥行42cm 麻布、樹脂、漆

 もう四半世紀も前に笠間日動美術館の所蔵となった二作品を修繕のため、一旦引き取ってきました。私の初期の作品は着色を油彩で行っていたので、年月の経過とともに空気中の水分との化学変化で表面がベタつくことがありました。自分で保管していた作品や持主が近くにいる作品は、順に漆で塗り替えましたが、茨城県の美術館に収蔵されてしまったセナとポロックにはさすがに手が出せず、どうなっているかと気を揉んでいました。

 このブログがきっかけとなって、美術館から連絡があったのが7月でした。9月末まで開催中の展覧会に展示しているということだったので、10月を待って車で出かけ、作品を二つ積み込んで帰ってきました。多少表面にベタつきがあり、ちょっと黒っぽくくすんでいたものの、美術館の収蔵庫が快適だった様で、あまり劣化していなかったのは幸いでした。何段階かに分けて色漆を塗り直すと、ご覧の様にすっかり若々しくなりました。社長からは、渋い色合いが気に入っているから極彩色にはしてくれるなというリクエストがありましたが、まあ許容範囲でしょう。今後の経年変化を考えると、丁度良い仕上がりになったと思います。