雑司ヶ谷鬼子母神

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2021年 25cmx33cm 紙、鉛筆、水彩

 このところ、週末毎に暖かいスケッチ日和がやって来ます。ちょうど家族で池袋に出掛ける用事があったので、先に雑司ヶ谷の鬼子母神で絵を描いてから合流することにしました。

 小学生の頃まで近くの西早稲田に住んでいたので、ここは自転車や都電に乗って何度か遊びに来た場所です。久しぶりに境内に足を踏み入れてみると、大きな公孫樹(いちょう)には何となく覚えがありました。ただ、それ以外の記憶はすっかり私の頭から消えていました。もう50年近く前、友だちと遊び場を探してここまで辿り着いた時は既に夕暮で薄暗く、もっと物寂しい雰囲気だったはずです。こんな明るい陽射しの中とはまるで印象が違っていました。そして大体、やって来てはみたものの、周りは墓だらけだし、鬼子母神という恐ろしげな名前にも気圧されて、いつも早々に暗い道を引き上げたのでした。

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 今回はコロナ禍もあり、賑わうという程ではありませんでしたが、春の陽気の中、年配の女性三人組が近くで弁当を広げて楽しそうに過ごしています。ただ、「鬼子母神」という、何ともおどろおどろしい響きからすると、私の子供の頃の暗い印象の方が、絵面(えづら)として正しい気もします。