転害門

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2019年 27cmx33cm 紙、鉛筆、水彩

 5月末、奈良・京都へ修学旅行に行ってきました。3年前は京都二泊でしたが、今年は初日の宿が若草山の麓だったので、奈良公園と法隆寺をじっくり観て回ることができました。興福寺の国宝館はナイトツアーで貸切見学でしたし、二月堂の夜間拝観、若草山の早朝散策と、盛り沢山の奈良泊となりました。

 京都はいつ行っても もちろん楽しいのですが、美術教師としては、生徒にできるだけ奈良を見せたいと思います。度々訪れる機会がある京都に比べて、東京の中学生が、この先 奈良の巨大な建造物や仏像に触れる機会はそう多くありません。欲を言えば、西の京とか明日香とか吉野とか室生寺とか當麻寺とか、まだまだ連れて行きたい所はありますが、一泊で全て叶えるのは無理です。それでも今回、奈良公園内で一昼夜を過ごせたことはとても良い経験になったと思います。

 さて、初日は大仏殿を観た後、それぞれの班で計画した場所を巡り、最終的に興福寺の国宝館に集合するコースでした。正倉院で数班を見送ってから、いくつかの渋好みの班が通る予定の、転害門に先回りして描いたのがこの絵です。正倉院、三月堂(の半分)と並んで、天平時代から遺る貴重な建造物です。

 小川三夫さんが書かれていましたが、西向きの門の一番南側、つまり外から門を見た時の右端ですが、潜戸を入る時、並んだ柱を見ると、沢山の大きな節が皆こちらを向いています。これこそ 古の宮大工が、木を生えていた時と同じ方角で使った証なんだそうです。

 この絵も本当は門の外から描きたかったのですが、人通りが多くて邪魔になりそうだったのと、ひっきりなしにやって来るバスの排気ガスが気になったので、境内側の道端に座ってスケッチしました。最近、カーナビでは「てんがいもん」と表示されたりもしますが、やはりここは「てがいもん」と読みたいところです。